<伊豆大島空港。富士山(矢印)までの距離は100kmたらず>
地面に立って富士山が見える最遠の地は和歌山県の妙法山で、
富士山との直線距離は322kmあるそうだ。
もし富士山のまわりが海だったら、こんなに遠くからは見えない。
240kmほど離れたら富士山は水平線に隠れてしまうからだ。
しかし妙法山の標高は749m。高いところなら遠くから見えるのだ。
<三河湾あたり。約160km。名古屋と富士山は意外に近い>
飛行機からならば、富士山はもっと遠くからでも見えていい。
僕も視程のいい日にのんびり外を眺める機会は多くないが、
コクピットから注意していればかなり遠くでも見えるだろう。
<新潟県上空(たぶん)から見た富士山。200km程度かな>
第二次大戦で、米軍のB-29は富士山を目標に飛来したという。
だけど、これは「なるほど、富士山なら遠くから見えるものね。
あそこに日本があるぞ~ってわかるね」ということではなかろう。
そもそも彼らにはどのくらい遠くから富士山が見えていたのか。
ピタゴラスの定理を使って大雑把に計算してみると
(地球半径6370km、飛行高度10km、富士山は3.7kmとした)
だいたい574kmくらいで山頂が水平線上に見えはじめる。
実際には、それが富士山と識別できるのはもっとずっと近く
せいぜい400~500kmまで近づいたところだと思うけど。
B-29は富士山から約2350km離れたサイパンから飛来したが
富士山が見えてくるのはその行程の、ほぼ終わりくらいである。
「富士山を目標に」というのは「富士山をめざして」というよりも
富士山を基準に航法誤差を修正して精密な現在位置を確定し、
それから東京などへの爆撃コースに入った、ということなのだろう。