堕ちていく気分
最近のアメリカでは特に物乞いが多くなったように感じる。
ヤニしていて、煙草をねだられるのはどこでも日常茶飯事。
これはそのときの気分であげたりあげなかったり。
きれいな身なりの若い女性に「5ドルくれませんか?」と
いわれたこともある。サンフランシスコだった。
財布を忘れて帰りのガソリン代がなくなってしまったという。
嘘だと思ったらすぐそばに車があるからともいわれた。
車はあるかもしれないけど、たぶん嘘だろうなと思った。
いかにも嘘くさかった。でも、5ドルあげた。
ちょっと惜しかったけど、そのくさい演技に対して払ったつもり。
喜んでいたけど、落ち込んだろうな。自分が堕ちていく気分で。
ある出版社から「阿施さんですかあ」と電話がかかってきた。
調子のよさそうな、若い男の声。
僕は電話勧誘は丁重に?お断りするが、出版社からの電話だと
仕事の依頼という可能性もあるから、ちゃんと話を聞かないと。
「昨年5月くらいにご挨拶だけさせていただいたんですが、
ごぶさたしております。覚えていらっしゃいますかあ」と言われた。
僕は、ちょっと挨拶したくらいの人の名前を覚えるのが苦手だ。
どこかの取材で一緒になったんだろうかと焦って記憶をたぐった。
うむむ…。しばらく黙り込んでしまった僕に、男は続けた。
「そのときは玄関先でご挨拶だけさせていただいたんですが…」
おっと、これで仕事の依頼ではないらしいと確信した(苦笑)。
「どんな玄関でしたか?」「うちは何階建てでしたか?」
問い詰めると、男はだんだんしどろもどろになってきた。
「あなた、僕と会ったことはないでしょう」
そういうと、男はそそくさと電話を切ろうとした。
切られる前に「卑怯者」といって、こちらから電話をきった。
普段は逆恨みされるとイヤだから、そんなことはしないのだが。
あとで調べたらその出版社は実在するが、
自費出版で自分史を作るというのがメインの会社のようだった。
自分史を売るのもいいが、売り方は気に食わない。
会社のやりかたとしてそんな指導をしているのかな。
まだ若そうな声だったけど、そのまま堕ちないといいね。
こんなことを書いた直後に某生命保険会社からカミさんに電話。
最近、というか前から契約内容を見なおさないかとしつこい。
「留守だけど、セールスですか。だったらお断りします」
「いえ、保険内容の確認などのためです」
大事な用事なのかな。折り返し電話すると言って番号を聞いたら
妙に反応がうれしそうだった。
大事な用事があるなら、折り返しで電話するのは普通だろうに。
「まさか保険内容の見直しの勧めとかじゃないですよね。
何度かクレームしてもやめないんで、うんざりしているんですけど」
やはり相手は口ごもってしまった。まったく、どいつもこいつも。
やれやれ…。
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