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2008/11/19

僕がパラグライダーを手放した理由

ハンググライダー仲間に誘われて、
一度だけパラグライダーを買ったことがある。
たためばリュックサックのようになる飛び道具は魅力的だ。
昔のハングパイロットは、ロクに練習もしないで勝手に飛んでいた。
お遊びの大会に出してもらったこともある。
Paraglider08
だけど結局、何度か開いたきりで知人のスクールに贈呈。
たぶん僕の機体で講習を受けたという人もいるだろう。

パラグライダーで苦手なのは、まず何本もあるラインだ。
飛ぶ前に1本1本、絡まないようにきれいにほぐさないとならない。
これが枯れ草とかにひっかかって、けっこう面倒くさいのだ。
「やってらんねえなあ」とボヤいていたら、インストラクターが
「そういう人はパラグライダーで飛ぶ資格がない」といった。
なるほどね…、じゃあやめよう。

そんなに素直に捨てられたのは、
パイロットの無防備さへの危惧もあったからだ。
後にはいろいろとプロテクターも考案されたようだが、
昔はスカイダイビング用と大差ないハーネスを着るだけだった。
そんな無防備な装備で機体のいちばん下にブラ下がっている。
クラッシュしたら、ひとたまりもない。
僕はハンググライダーでもボキボキと機体を壊しているが
これは自分が骨を折る身代わりになってくれたのだと思っている。
パラグライダーには身代わりになってくれる機体構造がない。

さらにいえば、当時の業界のアピールの仕方もトホホだった。
パラグライダーはパラシュートから発展したものである。
しかもパラシュートのように「開かない」という心配がない。
なにしろ離陸するときから開いているのだから。
でも、とりわけ空力を理解しない登山系のスクールなどは
「パラグライダーは失速しないから安心」という売り方をした。
冗談じゃない。パラグライダーだって失速する。
そして失速の仕方によってはリカバリーできずに墜落する。
そう理解していれば、注意して飛ぶこともできるだろうが、
失速しないと信じこませて飛ばせるのは非常に危険である。
僕は取材先でも何度かそう主張したが、疎んじられるだけだった。
もちろん人口が増えるにつれパラグライダーでは死傷者が続出。
とんでもなく危険なスポーツと見なされるようになってしまった。
いまの機体は当時とは比べものにならないほど安全性が高いが、
危険だというイメージを払拭するのは、どれだけ大変なことか。

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