<給食にはワインはつきません。あしからず>
独身の知人から「最近の親はひどいそうですね」といわれた。
「給食費なんか払わない人が増えてるそうじゃないですか」と。
やれやれ、すっかり「事実」として定着してしまったのか。
そりゃあ、給食費を払っていない人もいるかもしれない。
それで豪邸に住み、高級車を持っている人もいるかもしれない。
でも、それが社会問題になるほど深刻なのかははなはだ疑問だ。
まずは元になったと思われる数字を検証してみよう。
文部科学省が唐突に実施した2005年度分の調査結果である。
それによれば給食費の未納者がいる学校は全国で43.6%。
つまり56.4%の学校には未納者はいない。
また未納の児童数は全国平均で1.0%、東京都では0.8%。
未納額の総額は全国平均で0.5%、東京都では0.4%だ。
未納児童数の割合と未納額の割合に倍もの差があるのは、
引落口座に入金し損ねたとかで未納扱いにされてしまったものの
あとでちゃんと払った人がけっこういるってところだろう。
こうしたうっかりミスというのは珍しいことではないと思う。
残る未納にしても、「悪質」とされる割合はさらに低かろう。
未納金の回収に苦労している先生は確かに大変だろうと思う。
でもこの数字、深刻な社会問題として取り上げるほど大きいのか。
未納率が1%なら、どんな商売でも立派なもんじゃないのかな。
少なくとも税金の未納率と比べたらはるかに立派だろう。
そんな風に思う僕は少数派なんだろうな。
そうでなければ、あんなに大々的に報道されるわけがない。
まるで世論誘導の宣伝キャンペーンみたいに。
だいたい文部科学省の調査自体がちょっとうさんくさい。
たとえば未納のあった学校のうち未納者数の推移について、
「かなり増えたと思う」という学校が12.9%あり、
「やや増えたと思う」という学校は36.2%あるそうだ。
…。
なんだよ、この「思う」っていうあいまいな聞き方は(笑)。
「増えた」という事実ではなく「思う」っていう印象を聞くとはね。
しかも「かなり」とか「やや」っていう言葉も漠然としている。
そういう主観的な聞き方をするならば、
せめて「誰がそう思っているのか」を明確にしてほしいな。
あちこち人事異動で学校を変わっている校長先生の印象かな。
いつの、どの学校と比べて増えてると「思う」というんだろう。
しかも、これは「未納のあった学校」の印象なんだから
未納のない学校も含めると割合は半分以下になる。
で、実際に増えているのかどうかは文科省は公表していない。
つまり本当に増えているのかを判断する材料は出していない。
また未納者がみんな豪邸と高級車を持っているのかというと
こちらの調査結果もない。たぶんそんなに多くないのではないか。
とすると、これは現代のモラル低下として取り上げるべきではなく
個々の「困った人」の問題と考えるべきではないのか。
そういう人は、いつの時代にも1%くらいはいるんじゃないのかね。
ちなみに唐突にこのような調査が行われた期間は
2006年11月から12月にかけて。
「美しい国」とか「道徳」とか「おっぱい」とか「子守歌」とかの
そういう大教育キャンペーンを展開した内閣の時期に一致する。
ここぞとばかりに正義感あふれる批判を展開した人とか、
もっともらしい顔して大々的に報道したマスコミとか、
見事に「釣られた」人が多かったってことですかね。
あるいは釣られたふりをしてわざと「道徳心」を煽ったのかも。
「美しい国を実現するためである」とかの大義名分で(爆笑)。