けむにまく
大学を卒業した頃、世話になった学研の編集者からいわれた。
「おまえは自分のわからないことは書かないからな」
原稿が幼稚すぎると怒られたのかと思ったら、ほめ言葉らしい。
特に若い頃にはどうしても背伸びをしたくなる。
よくわからないのに知ったかぶりの記事を書きたくなったり、
自分でも意味のわかっていないむずかしい言葉を使いたがったり。
しかし理解していないことを読者に理解してもらうことはできない。
それよりは幼稚な原稿の方がマシなんだろう。
ただしワケのわからんものをありがたがる風潮も根強くある。
それを見越して、わざと変な表現をする世界、人たちもいる。
たとえば、高級に分類されるような料理の「お品書き」。
自分の浅学を棚に上げてけなすのだが、
読めない漢字で想像もつかない料理の名前をだらだらと並べる。
蓬豆腐、鮑茸、筍飛竜頭、山葵、黒楽御飯鍋釜炊きごはん
玉子松風、鱚からすみ焼き、川小魚鞍馬煮、鰻八幡巻き、
そら豆養老羹、鯛桜蒸しと若竹煮寄せ地餡掛け…。
これらはWEBで適当に拾ってきたものだが、ひとつもわからん。
「わからんところがいかにも高級そうだ」と思う自分も情けないが、
やはり人のことを煙に巻いて得意がっているようではいけない。
こうした言葉遊びが料理界の文化なのだとしたら、ちょっとひく。
TVや雑誌に登場するソムリエも凄まじい比喩を並べるよね(笑)。
自分の料理をこんな言葉で表現して笑わせてくれる知人がいる。
僕も真似してみようと思ったのだが、なかなかむずかしい。
札幌壱番 塩拉麺 叉燒 茹卵 搾菜 長葱 白胡麻 胡椒かけ。
ただ漢字を並べるだけで、高級感がだせるというものではないね。
それでも「サッポロ一番 塩ラーメン」と書くよりは高級そうかな。
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