宇宙船のタイヤ
与圧された旅客機の胴体にはとても大きな力がかかる。
機内を加圧することによる、風船のように膨らもうとする力だ。
ではタイヤはどうなってしまうのだ、とは思わないだろうか。
なにしろ旅客機の脚収納庫は与圧されていない。
空気(といっても、たいてい窒素)を入れたゴムタイヤは、
気圧の低い上空ではパンパンにふくれて破裂したりしないのか。
もちろん大丈夫だ。そのくらい、まるでへっちゃらだ。
ゴムタイヤといっても強度を持つのは強いプライコードだ。
タイヤの空気圧は(機種にもよるが)旅客機なら14~15気圧とか
戦闘機の高圧タイヤなら20気圧を超えるものもある。
普段からそれだけの高圧に耐えられるように作られているのだ。
一方で、普通の旅客機の上限高度である4万フィートあたりでも
周囲の気圧は0.2気圧程度に下がるにすぎない。
つまりタイヤは地上より0.8気圧ほど大きな力で膨らもうとするが
それは20気圧が20.8気圧になる、という程度にすぎない。
要するに、ズサンな人の空気圧調整の誤差の範囲(笑)。
着陸直後の熱で空気が膨張する方がよほど深刻なのでは。
実際、スペースシャトル・オービターのタイヤにしても、
普通の航空機用タイヤの常識を大きく外れるものではない。
「真空になっても、たかだか1気圧差ですからね」
と、某航空会社の技術屋さんにいわれたことがある。
タイヤではないが、某時計メーカーの人もそんなこといってたな。
宇宙空間用の時計といっても、そんなに大変じゃないんですよと。
それいっちゃうと、時計マニアの人はガッカリするだろうけど。
ただし月面車用となると普通のタイヤとはだいぶ違う。
わざわざ空気を入れてやる必要なんかない。
アポロ計画で使われたものは金網みたいだったし
ルノホートもご覧の通り。こんなもんでいいんだよね。
| 固定リンク