朝、起きたら湯をわかす
<上空から見た浅間山…と思う。お湯わいてるみたい>
昔、料理番組で麺をゆでていた。
大御所のベテラン女性役者と若いアナウンサーのペア。
ゆであがった麺をざるにあけて流水で冷ましながらもむ。
すぐに手を入れると熱いからまず水を通すのよ、と女性役者。
親切なアドバイスというより、
若い人はそんなことも知らないでしょというニュアンス。
で、若いアナは「知ってますよ、そんなこと」と吐き捨てるように。
やー、笑った笑った。若くたって、そんなことは知ってるよね。
たとえ知らなくたって、一度熱い思いをすればすぐにわかる。
その程度のことで偉そうにされると敬う気持ちも萎えるだろう。
もっと「なるほどな」という知恵こそ、年長者ならでは。
年長者ではないが、大学時代に地方の友人を訪ねたときのこと。
彼は朝、起きたらまずやかんいっぱいの湯をわかしていた。
真冬には部屋の中で氷が張るような過酷な下宿部屋だ。
もちろんガス湯沸器なんかない。
沸かした湯をポットに満たし、それで夜までしのぐ。
コーヒーを入れ、洗面器で薄めて顔を洗い、昼にはカップ麺を作る。
「いちいち湯をわかしていたらガスがもったいないだろ」
なるほどねえ。寒冷地の貧乏下宿では常識なのかもしれぬが、
実家で暮らしていた僕は、これぞ生活の知恵かと感心した。
大学を出て僕もひとり暮らしをするようになったが、
湯沸器はあっても朝、起きたらまず湯をわかすのが習慣になった。
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