ニューギニアの火力発電所から
まだ駆け出しの頃、ある雑誌の編集長と北海道取材。
夜はすすきので飲んだが、何軒目かの店がやばい店だった。
座った瞬間に、すぐに逃げ出したくなるような店だった。
「○○さん、ニューギニアごっこでサッサと逃げましょう」
僕は店員のスキを見て編集長に耳打ちして、
それから日本語がしゃべれなくなった。
特に深い理由もなく、僕らはときどきそういう遊びをしていた。
僕はニューギニアの火力発電所からやってきた技術者だ。
顔は日本人でも日本語はさっぱりわからない。
初めて日本にやってきて、あちこち案内してもらっている。
会話は英語。ニューギニアで英語を話しているのかどうか
そんなことは知らなかったが、まわりの人も知らなかったから
誰からも不審に思われたことはなかった。
英語といってもひどいジャパニーズイングリッシュだが、
真剣な顔をしていると、それを変だと思う人もいないようだった。
だからって、やばい店からどう逃げるというアテもなかったが
まっとうにしていたら、もっとどうしようもないと思ったのだ。
結局、僕らは予想通りその店でひどくボラれてしまった。
ボラれたと知って英語でわめきたてる僕をなだめながら、
編集長は「外国からの客に日本のよさを知ってもらおうと思ったが
とんだひどい目にあった。明日は領事館に訴えてくる。
これは国際問題になるかもしれない」などと捨てぜりふをはいた。
結局ボラれてしまったのだから負け犬の遠吠えみたいなものだが、
打ち合わせもなしでよくそういう嘘が出るもんだと感心した(笑)。
店を出てしばらくすると一人の店員が走って追いかけてきた。
で、1万円だけ返してくれた。領事館と国際問題がきいたかな。
しかしパプアでないニューギニアの領事館って、どこにあるのさ。
南極の領事館と同じくらい珍しいと思うんだけど(爆笑)。
それに、いったいいくらボラれたのだろう。
編集長の取材経費だったから、あんまり気にしなかったけど。
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