焼きそば
独身時代、ほぼ1年間焼きそばを食い続けたことがある。
それほど焼きそばが好きだった、というわけではない。
ただ自炊メニューを考えるのが面倒だったので、
作るのが簡単で肉も野菜も適当に摂取できるもの、
という理由から焼きそばに白羽の矢が立ったのである。
もちろん毎日3食すべて焼きそばだったわけではない。
昼間は出かけていたから外食ということが多かったし、
朝食はあんまり食う習慣がないから、せいぜい1日1回。
でも、さすがに1年も続けるとあきた。
で、次の定番メニューとして選んだのが…、焼きうどん。
大方の予想通り、これは半年ともたなかったな。
でも、メニューを固定すると買い物も簡単で、けっこういいよ。
そのぐらい味には執着がなかったから、たまに奇特な女の子が
「料理得意なんだ。おいしいモノを作ってあげるよ」とか
喜々としていってくれても、顔がひきつるばかりだった。
こんなことをいってもらえるのは人生に何度もないことだが、
「料理が自慢」という人に、どう報いることができるものか。
たとえおつきあいしていただけてもうまくやっていく自信がない。
若き阿施光南はこうして何度も人間関係に挫折したのである。
あわれなのは、そんな父の料理を食わねばならない小僧だ。
ようやく言葉がではじめた頃、かろうじて、こういった。
「おいしい…ない」
その不憫さに、父は泣いたぞ。
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