空のお守り
「神だのみ」が嫌いだ。初詣もせず、お守りも持たない。
ときどき旅の土産などにお守りをくれる人もいるが、
丁重にお断りしている。無理に渡されたらゴミ箱にポイ。
もちろん、それでバチが当たったことはない。
…その前に、御利益も受けそこなってるかもね。でも、
御利益や銀行利息なくても、けっこう暮らせるもんだぜ。
無信仰は僕の生き方だが、他人におしつけることはない。
小僧に「神さまっているの?」と聞かれたときには、
「父ちゃんはいないと思う」と答えたが、断言はしなかった。
もちろん他人の信仰も、それなりに尊重はする。
宗教式の結婚式や葬式にも参列はするし、
コクピットに御札を張ってある飛行機にだって乗る。
風水だの血液型だのという女は(男もか)ウザいと思うが。
どうして占いが悪徳商法にはならないのか、不思議だよ。
お守りは容赦なく捨てる僕にも例外がひとつだけある。
岩崎貴弘さんの葬式で配られたお守りだ。
岩崎さんには世話になった。
いらないといっても本人はもういない。
「お守りったって、自分がホトケになっちゃ仕方ないだろ」
葬式から帰る特急の中で、ぼんやりそんなことを考えた。
申し訳ないけど、帰宅したら捨てるつもりだった。
ところが、小僧がそれを発見して「欲しい」といった。
仕方ねえなあと思ったが、まあ岩崎さんの形見だ。
小僧はそれをランドセルにつけて学校に通っている。
先日、小僧が「中に何が入ってるんだろう」と聞いてきた。
葬式は仏式だったので、そういうものだろうと思ったが、
いちおう開けてみることにした。
入っていたのは仏さんでもお経でもなかった。
岩崎さんのサインと「空へ」というメッセージが書かれた紙。
こんなところまで、岩崎さんらしい。
事故調の報告がでましたね。
| 固定リンク