くわしい経緯は省略するが、1枚の紙がでてきた。
青い花柄の包装紙に「あせくんへ」と書いてある。
「なんだこれ?」としばらく考えて、血の気が引いた。
これは30年も昔の、バレンタインデーの包装紙だ。
自慢ではないが、昔からモテなかった。だから、
バレンタインデーにチョコレートをもらったことはほとんどない。
僕が十代のころは義理チョコなんていう習慣もなかったし、
あったとしても義理すらかけてくれる女の子がいたかどうか。
おかげで、もらったチョコレートのことは今でも覚えている。
最初にもらったのは中学1年のときだった。
しかし堂々と「もらったのだ」と自慢できるような話ではない。
放課後、サッカー部の練習を終えて教室に戻ったら、
同級生の女の子がしょぼんと一人残っていた。
どうやら本命男子にチョコレートをあげそこねたらしい様子。
「仕方ないから阿施にやるよ」と投げやりにくれたのだ。
カミさんは「照れかくしだったんじゃないの」といってくれたが、
可憐な、僕なんか相手にしそうな女の子じゃなかった。
高校に入ってからもチョコレートとはあまり縁がなかったが、
ある年のバレンタインデーから1週間もたってからのこと。
授業中に先生の話もロクに聞かず、
たまには机の中のゴミを整理しようとゴソゴソしていたら、
「なんだこれ?」と青い花柄の包装紙を見つけたのである。
「あせくんへ」と書いてあるだけで差出人の名前はない。
ひとり赤くなっている僕を見た隣の悪友が自分の机も捜したが、
チョコレートは入っていなかった。ヤツもモテなかったのだ。
結局、誰がくれたのかは卒業するまでわからずに終わった。
いまも誰だったかわからないが、あたたかい思い出だ。
しかし、まさか包装紙が残っていたとは…。
何度かの引越しのときにも、まったく気づかなかった。
でも、そのときは捨てられなかったんだね。
笑うなら、笑えばいい。どうせ、モテる人にはわからないよ。
同じ頃に初めて遠征した沖縄、嘉手納基地で撮影した
建国200年塗装(垂直尾翼先端とラダー)のKC-135。
その頃からこんなもん撮って、色気のない高校生だった。