根性の髪の毛
飛んでるヘリコプターの外を歩いたことがある。
人生、何事も経験なのだ。
もちろん怖かったし、風も強烈だったけど、
いちばんすごかったのは僕の髪の毛だろう。
どうして上を向いてるんだ?
空撮ではヘリコプターのドアを開けることも、
外に出てスキッドの上に立つことも、よくある。
だが外に出てドアまで閉めてしまったのは、
この写真を撮った15年以上前の一度きりだ。
そうしなければ撮りたい写真を撮れなかったのだ。
後ろのドアから出て、いったんドアを閉め
そろりそろりとスキッドのいちばん前まで歩いた。
その様子を操縦席から撮ってくれたのが冒頭の写真だ。
秩父みたいな景色だけど、カナディアン・ロッキーの渓谷。
ベトナム帰りというだけあって、うまいパイロットだった。
ヘリコプターは頭上で回るローターの力で飛ぶ。
その風は当然、上から下に向けて吹いている。
だからヘリコプターの外に出たときに受ける猛烈な
風は上からの風である、と漠然と考えていた。
ところが僕の髪の毛は、すべて上を向いている。
つまりヘリコプターでも、巡航中は
前から受ける風の方が優越なのだという、ちょっとした発見。
確かにヘリコプターの胴体は、上よりも前から風を受けたときに
空気抵抗が小さくなるような形をしている。
ウインドシールドに気流糸をつける人もいるし。
あるいは、
単に僕の髪の毛が根性を発揮しただけということか。
髪の毛、大事にしないとね。
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