謎のハワイ取材
長くこの商売をしていると、ワケのわからん仕事もくる。
あるときのハワイ取材は目的が不明だった。
その頃はまだアメリカ渡航にはビザが必要で、
急な話に対応できるのは僕しかいなかったのだ。
「で、何しに行くの?」と編集者に聞いても、
「わからないけど、とにかく来いってさ」。
ハワイ観光局か何かの仕事らしい。でも、どんな?
仕方ないので、たいていの撮影には対応できる機材と
いちおう海パンをバッグに突っ込んで飛行機に乗り込んだ。
機内では他社のカメラマンたちとも一緒になった。
分野はバラバラで、誰も渡航の目的を知らなかった。
ホノルル空港に着くと3人ずつタクシーに乗せられたけど、
運転手に「なぜ皆ホテルが違うのか」と言われて驚いた。
そんなのは初耳だ。こっちが聞きたいくらいだぜ。
僕は1人、ホノルルでもトップクラスのホテルで降ろされた。
半信半疑でフロントに行くと、部屋は用意されていた。
フルーツが置かれたベランダに出て海を眺め、
さてこれからどうしたものかと困っていたら、
すごい美人のマネジャーさんが挨拶にきてくれた。
「ところで・・・・僕は何をしに来たのでしょう?」
我ながらアホすぎて赤面するような質問だ。
でも美人のマネジャーさんはにっこりと笑って、
「あら、ここはハワイよ。泳ぎにきたんでしょ」と言った。
そうか、僕は泳ぎにきたのか。ここはハワイだものな。
ワケはわからないままだったが、僕は受け入れた。
それから数日間は、好きなように遊んだ。
いまのように電子メールはなかったし、
高い国際電話で編集部に報告するまでもなかった。
電話したところで、どうなるものじゃないし。
ま、長くやっていても、そんな話は滅多にないことですよ。
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